第20 回FMO研究会「生命現象を量子構造生物学で解き明かす 」

日時: 2019年10月23日(水) 16:30-18:00
場所: 東京・タワーホール船堀401(CBI学会2019年大会にて)

開催趣旨:

創薬において X 線結晶構造解析などの構造生物学に基づくタンパク質の立体構造は、精緻な 分子設計を実現する上で価値の高い情報である。一方で、生命現象を理解する上でリガンドポケ ットや活性部位周辺の構造精密化が重要な課題の一つである。近年ではタンパク質結晶学分野の 技術的進歩により、高分解能 X 線結晶構造による原子位置情報の高精度化、中性子線構造解析 による信頼度の高い水素原子の位置情報を含むような構造も利用可能な状況になり、これまで扱 うことの難しかった化学反応などの分子のふるまいを実験から直接得られるようになった。加え てフラグメント分子軌道(FMO)法に基づく構造最適化や電子密度解析を利用した構造精密化 の試みも始まっており、量子化学計算の精度に見合った構造を用いて解析が可能になりつつある。 これらの水素原子情報を含んだ精緻な構造により、活性中心の反応機構や分子認識メカニズムの 解明につながることが期待される。このような構造生物学と量子化学計算を融合させた研究は 「量子構造生物学」として新たな学術領域として創生されつつあり、実験・計算技術の向上に伴 いさらなる発展が期待される。本セッションでは、構造生物学と計算化学の両方の観点において、 お互いにどのような情報を引き出し、研究推進に役立てることが出来るか実験研究者と計算研究 者を交えて議論する。

モデレーター
渡邉 千鶴 Chiduru Watanabe 理化学研究所 生命機能科学研究センター, JST さきがけ RIKEN Center for Biosystems Dynamics Research, JST PRESTO
福澤薫 Kaori Fukuzawa 星薬科大学 Hoshi University

1. 生体高分子による特異的分子認識機構の FMO 解析 (16:30 – 16:55)
仙石 徹 Toru Sengoku 横浜市立大学医学部医学科 Department of Biochemistry, Graduate School of Medicine, Yokohama City University
生体高分子による特異的な分子認識は多くの生命現象の根幹をなす。その詳細な 理解のため、X線結晶構造解析と FMO 計算を組み合わせる試みについて紹介する。

2. ヒト由来プロテインキナーゼ CK2 の中性子結晶構造解析 (16:55 – 17:20)
安達 基泰 Motoyasu Adachi 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology
近年解析に成功した創薬標的タンパク質の中性子結晶構造を紹介し、得られる水素原子位置 情報と量子化学計算の課題をディスカッションしたい。

3. 量子化学計算に基づくリガンド結合ポケット周辺の水素原子の構造解析 (17:20 – 17:45)
渡邉 千鶴 Chiduru Watanabe 理化学研究所 生命機能科学研究センター, JST さきがけ RIKEN Center for Biosystems Dynamics Research
中性子線結晶構造などで得られたリガンド結合ポケット周辺の水素原子を含んだ構造の妥当 性を量子化学的に評価するため、FMO によるエネルギーポテンシャル解析、および FMO 電 子密度を用いた実験データとの相補的な比較について紹介する。

4. 総合討論:生命現象を量子構造生物学で解き明かすためには?(17:45 – 18:00)
座長 福澤薫 Kaori Fukuzawa