FMODD・KBDD 合同公開シンポジウム

―MD と QM の融合から創薬へ―

日時: 2017 年10 月4 日(水)14:30-18:00
場所: タワーホール船堀 小ホール
主催:バイオグリッドセンター関西 共催:CBI 学会FMO 研究会

開催趣旨

インシリコ創薬分野では、スーパーコンピューター「京」を用いたコンソーシアム型の産業利用課題が現在2つ進行中である。 KBDD は超精密な古典MD に基づいており、FMODD はQM 手法であるフラグメント分子軌道法が基盤となっている。この二つの軸が融合することでインシリコ創薬の新しい可能性が拓けることを期待して、合同シンポジウムを開催することにした。それぞれのコンソーシアムの活動状況について広く周知するとともに相互の対話を深めることを目的としている。尚、本シンポジウムは第14 回FMO 研究会を兼ねている。

■■ 基調講演 ■■
座長:田中 成典 (神戸大学大学院システム情報学研究科)
1. 14:30-15:00
「医療における薬の重要性とアーリーステージにおける製薬企業同士の連携」
江口 至洋(NPO 法人システム薬学研究機構 理事・ 東京理科大学薬学部 客員教授)
医療サービスにおける薬の役割は大きく、患者や医療者の薬への期待には大きなものがある。しかし創薬へ向けた研究開発は困難かつ多様で、2つの面でのアライアンスが求められている。1つは、研究開発参画者のアライアンスであり、他の一つは、研究分野のアライアンスである。それら2つのアライアンスへの期待を述べる。

■■ 第1セッション KBDD 報告(15:00-16:00) ■■
座長:奥野 恭史 (京都大学大学院医学研究科)
2. 15:00-15:30
「KBDD の歩み」
荒木 望嗣 (京都大学大学院医学研究科)
KBDD は2012 年度よりHPCI システム利用研究課題に採択され、現在22 社の製薬企業、2 社のIT 企業とアカデミアなど10 機関でプロジェクトを推進している。ビッグデータWG では2012 年に蛋白約600 と化合物3000 万の相互作用を予測する大規模計算を実施しメンバーに配布した。また、シミュレーションWG では、蛋白質と化合物の間の結合構造、結合親和性、結合過程を精密に予測するための研究に取り組んできた。ここではこれまでの5 年間に及ぶ研究の内容を報告する。
3. 15:30-16:00
「KBDD と製薬企業」
安尾 和也 (塩野義製薬株式会社)
KBDD を通じて行った蛋白質-化合物結合親和性予測の実証研究やKBDD の活動全体に対して製薬企業目線での評価やコメントを紹介する。
休憩(16:00-16:15)

■■ 第2 セッション FMODD 報告 ■■
座長:上村みどり(帝人ファーマ株式会社)
4. 16:15-16:45
「FMO 創薬コンソーシアムにおける活動」
福澤 薫 (星薬科大学薬学部)
FMO 創薬コンソーシアム(FMODD)では、これまでに「京」を利用して1,000 構造を超えるタンパク質‐リガンド複合体のFMO 計算を実施し、創薬現場での実用化にむけた評価・解析を行っている。また計算結果の利活用のための「IFIE データベース」を整備している。ここでは発足以来3 年間のFMODD の活動内容について報告する。
5. 16:45-17:10
「PPI 阻害剤へのFMO 計算の適応事例について」
小澤 基裕 (キッセイ薬品工業株式会社)
PPI (Protein Protein Interaction) の制御を狙った医薬品、特に有機低分子の開発は難易度が高いが、近年少数ではあるが低分子薬の臨床試験が実施されている。FMODD ではPPI阻害剤をテーマの1つとして取り組み、その1つとしてブロモドメイン阻害剤の実証計算を実施した。本講演では、FBDD (Fragment Based Drug Discovery) を活用したブロモドメイン阻害剤の開発に関する論文情報に対してFMO 計算を適用した結果について報告する。

■■ パネルディスカッション ■■
6. 17:15-18:00
「MD とQM の融合から創薬へ」
司会: 本間 光貴 (理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター)
パネリスト:
江口 至洋(NPO 法人システム薬学研究機構 理事・ 東京理科大学薬学部 客員教授)
田中 成典 (神戸大学大学院システム情報学研究科)
福澤 薫 (星薬科大学薬学部)
上村 みどり (帝人ファーマ株式会社)
奥野 恭史 (京都大学大学院医学研究科)
鷹羽 健一郎 (旭化成ファーマ株式会社)
安尾 和也 (塩野義製薬株式会社)
医薬分子の振る舞いを予測する上で、時系列変化を見るMD と精密な相互作用を解析するQMは、相互補完的な関係にある。これまで、KBDD は主にMD、FMODD は主にQM の観点から創薬の現場で実用的な手法を目指して検討を行っているが、どちらかの一方の方法だけでは苦手な対象もあり、今後の連携が欠かせない。本パネルディスカッションでは、お互いの方法を補うための連携の進め方、日本発の計算インフラとして、MD トラジェクトリーやQM 計算値のデータベース構築と世界に向けた発信、次世代のQM 力場の開発などをトピックとして議論したい。

※ 公開シンポジウムの参加費は無料です。

http://cbi-society.org/taikai/taikai17/program.html

http://cbi-society.org/taikai/taikai17/documents/FMODD_KBDD.pdf